敏感肌の本当の原因とは?バリア機能の仕組みを現場経験から解説

ライター:田中 美咲

「何を使ってもヒリヒリする」「季節の変わり目になると肌が荒れる」——クリニック勤務時代、こうした相談は週に何十件と寄せられていました。結論から言うと、敏感肌の多くは「バリア機能の低下」が根本原因です。この記事では、バリア機能とは具体的に何なのか、なぜ低下するのかを、最新の研究と私自身の経験を交えながらお伝えしていきます。

敏感肌とは何か——「肌質」ではなく「状態」という視点

敏感肌というと生まれつきの肌質だと思っている方が多いのですが、現場で見ていると、後天的に敏感になったケースがかなり多いんですね。乾燥、紫外線、洗いすぎ、ストレス——きっかけは様々ですが、共通しているのは「バリア機能が弱っている」という点です。

2025年のEuropean Journal of Dermatologyに掲載された研究では、アトピー性皮膚炎の既往がある人は、症状が落ち着いた後もバリア機能が低い状態が続きやすいことが報告されています。ただしこの研究はアトピー既往者が対象なので、すべての敏感肌に当てはまるわけではありません。それでも、バリア機能の低下が肌の過敏さに直結するという点は、多くの方に共通する話だと私は考えています。

バリア機能の正体——「レンガとモルタル」の構造

バリア機能という言葉はよく聞くけれど、具体的に何なのかイメージしにくいですよね。肌の一番外側にある「角層」は、わずか0.02mmほどの薄さ。この角層が外部刺激から体を守り、内側の水分が逃げるのを防いでいます。

よく使われるたとえが「レンガとモルタル」です。角質細胞がレンガ、その間を埋める細胞間脂質(セラミド・コレステロール・脂肪酸)がモルタルの役割。このモルタル部分がスカスカになると、隙間から水分が蒸発し、外部の刺激物質が入り込みやすくなります。

2023年のSkin Research and Technology誌の研究では、バリア機能を方向別に測定する手法が検討されており、角層の構造が部位や方向によって異なることが示されています。つまり、同じ顔でも頬とあごではバリアの強さが違う可能性があるということです。私自身、Uゾーンだけ乾燥しやすいのはこのあたりが関係しているのかなと感じています。

セラミドの重要性——でも正直なところ…

バリア機能の話になると必ず出てくるのがセラミドです。2022年のBritish Journal of Dermatologyに掲載された研究では、乾燥肌・湿疹傾向のある成人62名を対象に、角層の脂質構造を整えるケアを行ったところ、バリア機能の改善と刺激への耐性向上が確認されました。8週間の継続使用で経皮水分蒸散量(TEWL)が有意に低下したという結果です。

さらに2025年の研究でも、アトピー素因のある成人に生理的脂質を外用したところ、角層のセラミドプロファイルが改善し、バリア機能が強化されたと報告されています。ただしこの研究は特定の脂質配合比率で行われており、市販のセラミド配合化粧品がすべて同じ効果を持つとは限りません。

正直なところ、「セラミド配合」と書いてあれば何でも良いわけではないんですね。配合量、セラミドの種類、他の成分との組み合わせで効果は大きく変わります。クリニック時代、セラミド化粧品を使っているのに改善しないという方の多くは、洗顔で必要以上に脂質を落としていたり、使用量が少なすぎたりしていました。

バリア機能が低下する原因——洗いすぎは本当に多い

バリア機能が低下する原因は複数ありますが、私が現場で最も多く見たのは「洗いすぎ」です。朝晩しっかりクレンジングして、洗顔料でダブル洗顔して、さらにピーリングも週2回——このような方は珍しくありませんでした。

洗顔するたびに角層の細胞間脂質は多少なりとも流れ出ます。若いうちは回復が早いですが、年齢とともにターンオーバーが遅くなり、補充が追いつかなくなる。気づいたら慢性的にバリアが弱い状態になっていた、というパターンです。私自身、洗顔は1日2回までと決めていますし、朝はぬるま湯だけという日も多いです。

他にも、紫外線による酸化ダメージ、睡眠不足、ストレス、偏った食事など、内側からの要因も無視できません。私はヨガを始めてから肌の調子が安定したのですが、運動そのものより睡眠の質が上がったことが大きかったと感じています。

まとめ——バリア機能を守るために今日からできること

敏感肌の根本には、角層のバリア機能低下があります。セラミドを中心とした細胞間脂質を守り、補うことが基本ですが、研究結果がそのまま自分に当てはまるとは限りません。対象者の年齢や生活環境が違えば、結果も変わります。

それでも一つ確実に言えるのは、「落としすぎ」と「塗りすぎ」を見直すだけで肌が変わる人は多いということ。高価な美容液を買う前に、洗顔の回数と保湿剤の量を確認してみてください。クリニック時代の経験では、正しいケアに切り替えてから2〜3週間で変化を感じ始める方が約6割でした。

参考文献

本記事は以下の研究・論文を参照して作成しました。

  1. Danby SG et al. (2022)
    Enhancement of stratum corneum lipid structure improves skin barrier function and protects against irritation in adults with dry, eczema-prone skin..
    Br J Dermatol. [PubMed]
  2. Cho E et al. (2025)
    Skin condition and barrier function in individuals with a history of atopic dermatitis..
    Eur J Dermatol. [PubMed]
  3. Alsamad F et al. (2023)
    Directional assessment of the skin barrier function in vivo..
    Skin Res Technol. [PubMed]
  4. Andrew PV et al. (2025)
    Topical supplementation with physiological lipids rebalances the stratum corneum ceramide profile and strengthens skin barrier function in adults predisposed to atopic dermatitis..
    Br J Dermatol. [PubMed]

※ 本記事は医療アドバイスを提供するものではありません。健康に関する判断は医療専門家にご相談ください。

田中 美咲

美容皮膚科クリニックに7年間勤務した後、現在は美容・スキンケア専門ライターとして活動。クリニックでの現場経験をもとに、科学的根拠に基づいたスキンケア情報を発信しています。自身も20代の頃から敏感肌に悩んだ経験から、「続けられるシンプルなケア」を大切にしています。

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